物証に基づく適切な防災のために

物証に基づく適切な防災のために

地質学・堆積学を専門として,過去の巨大災害(津波,地震,火山,台風)の履歴と規模を推定する研究を行っています.過去の災害の理解には学際的なアプローチが必要で,工学分野の技術や歴史・考古学等の知見を融合させた研究に取り組んでいます.

最近の代表的な取り組み


南太平洋の巨大災害と人類拡散

南太平洋では,人類が到達してから大航海時代までの間にも,火山噴火や地震により巨大津波が繰り返し発生した可能性があります.巨大災害は,人類の移住や拡散を促した可能性もあり,マウイの神話等にも語り継がれているのではないかと考えられています.しかし,その実態は十分解明されていません.フィジーやトンガなど複数国を対象に,過去の災害の実態を解明するべく,現地調査を行っています.

我が国の古津波履歴と規模の評価

2011年東北沖津波を受け,日本各地での低頻度巨大津波のリスクを早急に再評価する必要性が高まっています.しかし,日本の沿岸部は広く,十分に調査・研究が進んでいないのが現状です.そこで,沿岸各地で調査を行い,過去の津波履歴や規模の推定を行っています.得られた成果は,国や自治体の長期評価等にも活用されています.

巨大津波が激変させる沿岸地形と生態系

巨大津波は沿岸地形と生態系を短期的ながら激変させます.すぐに回復する場合もあれば,事前とは異なる状態になることもあり,何が要因となっているのか十分に解明されていません.現地調査や実験・計算等により短期・長期の地質・地形変化を,化学分析や環境DNA等の分析により生態系の変化を調べる研究を行っています.

古台風学の創成

地球温暖化に伴い台風の強度や頻度が変化する可能性があり,その将来予測が重要です.一方,過去の温暖期や寒冷期での台風の強度や頻度に関する情報は限られており,気候変動との関係は十分に明らかにされていません.地質学的アプローチにより過去の台風を理解する,「古台風学」の研究を推し進めています.